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フロント・ハブ・ベアリングの交換

bearing end play 2006年の大晦日にベアリングをチェックすることになり、その後妙な方向に進んでしまうきっかけになったのが左の写真。確かアメリカのフォーラムSamba.comで見つけたんだと思う。フロントのベアリングの正しい遊びは、スラスト・ワッシャーをドライバーの先で "指で押して動かせる程度" で、ドライバーをひねったりテコの要領でこじってはイケナイんだという。僕はワッシャーが動けば十分なクリアランスがあるんだと解釈していたので、テコの要領でこじっていたわけで、締め付け過ぎということになってしまった。改めてマニュアルを見てみると、ゲージで測る場合は0.03-0.12mmで、最大値だとバルブクリアランスの0.15mmよりちょっと少ない程度だ。バルブクリアランスの時にロッカーアームをカチカチやると結構隙間を感じるし、ハブ・ベアリングもそれなりにクリアランスがあって良かったのかも知れない、と思った。

このところ40km/h付近からノイズが出るようになったのも、締め付け過ぎでベアリングが痛んだせいか。というわけでクリアランスを広げることにしたわけだけど、締めつけ過ぎていたならばベアリングはすでに終わってるはずなわけで、大晦日にやった作業は本来手遅れなのであった。ともあれ、ホイルシリンダーのOHという寄り道もしたけれど、ベアリングのクリアランスはこれまでよりも広めにして作業はひとまず終了。ところがそれ以降「バスが走ってるようなノイズ」に加え、ハンドルを右に切った時、つまり左前輪に加重が掛かった時に、これまでとは違うノイズまで出るようになった。すでに痛んでいたベアリングなのに、慌ててクリアランスを広げたのでかえって状況を悪くしたってことなのか…。


というわけで、まずは音が大きい左側のベアリングを換えてみることにした。なんでもフロントのインナーはめったに売れないらしい。確かにアウターと比べるとインナーは大きくて頑丈そうだし持ちが違うのかも知れない。僕の場合、音を出している犯人か分からないから、インナー、アウター揃って交換するしかない。

bearing front left 外したベアリングとレースを見てみると、大して痛んでるようには思えなかった。金属が擦れ合っていた部分に多少の跡はあるけど、こんなのは許容範囲でしょう。と、思い出してみると、左側はグリスカップのコーキングをしてなかったため中に水が入ってベアリングを痛め、2年半前(約1万キロ前)に交換してたんだった。よく見るとMade in Germanyですね。もったいない気もしたけど新品のベアリングに交換。こいつは、緊急事態用として取っておくことにしました。

教えに従ってクリアランスを広めにし、一通り組んでテスト走行へ。ところが、右にハンドルを切った時に出るノイズは全く消えていなかった。というか、これまでよりもかえって大きくなったんじゃないか?

ジャッキアップして左側をチェックしてみると、ドライバーを指で押してワッシャーが動くくらいまでクリアランスを広げると、ホイールを12時・6時方向に掴んで動かした時に結構なガタがある。自分の別ページで、ガタがある場合はベアリングの締め付けが甘いかベアリングが終わっているのである、とか書いておきながら、これじゃやっぱりマズいだろう。これまで使ってきたベアリングはぱっと見痛んでなさそうだし、少なくとも2年間は何事もなく乗ってこれた。締めつけ過ぎていたんなら、もっと痛んでいてもおかしくないだろう。新品のベアリングでノイズが出たのだから、締めつけが緩かったとしか考えられないし、ここはこれまで通り、ドライバーの先をこじってワッシャーが動く程度まで締め付けることにした。そしてまたテスト走行をしてみると、右コーナーでのノイズは出なくなっていた。なんのこっちゃ…。つまり、これまでのやり方で良かったってことじゃないか。音が出ないかどうか直線道路で右に左に激しく蛇行運転をしていたので、周りの人間には、ずいぶん下品なドライバーだと思われたことだろう。

bearing right 左側のノイズはなんとかなった。しかし40km/hを越えたあたりから聞こえてくる唸り音は相変わらずなので、続いて右側の作業に移った。こちら側はアウターばかりでなく、インナーもレースにかじりがあったりして、結構痛んでいた。

inner bearing right 特にひどかったアウター側。以前からローラーの表面が剥離したような金属粉が出ていることがあって、そろそろ交換しなくちゃとは思ってたけど、ここまできていたか。

右側も、これまでずっとやってきたように、ドライバーをこじってワッシャーが動ごくくらいのクリアランスにしてテスト走行へ。するとノイズはきれいさっぱりなくなっていた。ノイズを気にしないで走れるのは久しぶりだ。結局、今回の筋書きはこういうことだったんだろう。まず右側のベアリングに寿命がきた。それである程度のスピードで唸り音が出るようになった。ところが発作的にクリアランスを広げたため余計なノイズが出るようになって、交換しなくても良い左側を交換するハメになったと…。もっとも40km/hから出てたノイズはホイールを手で回すくらいでは音を確認できなかったので、どちら側のベアリングがダメだったのかは分かりませんでしたけど。

きちきちに締め付けて、てこの要領でやっとワッシャーが動ごくくらいだと締めつけ過ぎなのはわかる。だけど、たいした力もないのに、指で押したくらいでワッシャーが動くくらいでは緩過ぎということなんだろう。僕は今後もてこの要領でこじってクリアランスを取ることに決めました。


レースの交換

notches on drum ベアリングはベアリング・レースとセットで売られていて、交換する時にはレースも一緒に交換することになっている。ベアリングは指で掴めば外せるけど、レースはドラムに圧入されているので引っ張って取れるものじゃない。僕は以前、プレスがないとレースの交換はできない、と読んだ気がしたので、個人で交換するのは無理だと観念していたが「そんなもん、ぶっ叩けば良い」とアドバイスを頂いたのでした。ドラムにはベアリング・レースを抜くため、アウター、インナー、それぞれ2カ所ずつ切り欠きが入っていて、そこをポンチとかで叩けば簡単に打ち抜くことができるのだ。ただし、片方をガンガン叩くとレースが斜めに動いてしまうので、両方の切り欠きを少しずつ叩いた方がいい。本当は2カ所を同時に叩ける長方形の鉄板でも使うとベストなのかもしれない。

bearing fitter 新しいレースも基本的には叩いて入れるわけだけど、ドラムの縁より奥まで叩き入れる必要があるので、トンカチで叩くのでは途中から届かなくなってしまう。そこで前回交換した時、特殊工具を作ってみた。外したレースの外周をぐるりとグラインダーで削って、叩き込んだ時に新品のレースと一緒にドラムにハマらないようにしたものだ。

bearing fitter on 新品のレースがドラムの縁まで入ったところで、外径を削ったレースを上に乗せてさらに叩く。そのうち叩いた時の音が鈍い音に変わって、最後まで入ったんじゃないだろうかと推測できる。もっとも、こんなものを使わなくても、外す時と同様ポンチで叩いても入らないことはないだろうけど。

bearing fitter on ところで、フロントのハブに最適なグリスは何なんだろう。マニュアルにはリチウム・グリスを使うように書いてあるので、ビートルを買ってからしばらくは、エーゼットのグリスを使ってました。性能の程は分からないけど、いかんせんホームセンターで売ってる万能グリスなので、なんとなく違うような気はしていた。使用温度範囲はー20度から+120度ながら、気温が高くなると流れやすい傾向があるようでした。そう言えば子供の頃、プラモデルを作っていると「ここにグリスを塗ってください。無い場合はポマードでもOK」なんて説明書に書いてあったことを急に思いだしました。親父のポマードをちょくちょくくすねたものです…。で右が今使っているワコーズのHMG-U M520。リチウム系で良さそうなのが見つからないのでウレア系に乗り換えた。-30度から+200度まで耐えるタイプ。値段は2500円くらいしたかもしれない。粘度が高く、冬場だと糸を引くくらい。糸を引いてる写真も載せようかと思ったけど、夏場のせいかうまく撮れなかったのでボツにしました。エーゼットよりも粘度が高いので、ベアリングのクリアランスもそれまでよりほんの気持ち緩めに設定しています。

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