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スタータートラブル再発

four motors この冬、僕が住む東京地方は週末の度に雪が降った。その雪が初めて降った日の朝、ワイパーを上げようと駐車場に行った。雪が積もったビートルはもこもこしてて、なんだかかわいい。ついでなので極寒時エンジンスタートテストもやってみることに。雪が降ってるからと言って気温がとても低いと言うことではないんだけど、雪の日にもちゃんとエンジンが掛かると、おんぼろではない証のような気がしたわけです。

キーを回すとスターターモーターの回転はちょっと遅くて辛そうな様子。仕切り直そうとキーを戻すと、なんと、スターターが止まらないじゃないか。つい最近作業をして解決したと思っていたので、焦るというよりもなんだか腹が立ってしまった。お陰ですぐに見つかるはずの13mmメガネも、工具箱のあさっての場所を見ててなかなか見つけられない。その間もスターターは弱々しく回り続けている。やっとのことで13mmを見つけ、例によって有象無象をリアスペースに放っぽり込んでリアシートを上げ、なんとか回転が止まる前までにバッテリーのマイナスを外すことができた。なんのことはない、要するにおんぼろだったのだ。雪が降っているのでその日は作業もできないし、はね上げたリアシートもそのままに、気分がささくれたまま部屋に戻った。

まず疑ったのは、最近交換したばかりのイグニッション・スイッチ。売ってくれたReadyBugに泣きのメールをすると、その夜のうちに返事が来た。曰く、スイッチが原因ならば、バッテリーの逆側にあるコネクターに繋がっている配線に12Vが流れっぱなしになるはず、と。なるほど。

雪はほどなく雨に変わり、翌日になるとほとんど残っていなかった。朝一番で駐車場に行き、まずはバッテリーのチェック。こいつが空になっていたらさらに面倒くさいことになってたけど、テスターを当てると13V近くを示してくれた。寒い日にあれだけセルを回し続けたのに随分といい子だ。

バッテリーのターミナルを戻してキーをひねりトラブルが健在なのを確認してから、ターミナルをまた外す。前回もそうだけど、スターターが回り放しになった時、一度バッテリーを外すと、再び繋いでもいきなりスターターは回り出さない。電流が途絶えるとゼロの状態に戻るようだ。次にアドバイスに従い、バッテリーの反対側にあるコネクターから端子を抜き、テスターを当てバッテリーを繋ぎなおし、キーをSTART→ON→OFF→START→ON…と繰り返してみた。するとテスターの表示は約12Vから約ゼロにきちんと切り替わって行く。最近いじったところが問題ではなかったことにはホッとしたけれど、事態はさらに深刻ということになってしまった。スイッチに問題がないのであれば、犯人はスターターなのだから。


ソレノイド

starter movie スターターはモーターとソレノイドのふたつの部品で構成されていて、キーをひねった時に最初に反応するのがソレノイド。こいつがドライブピニオンを飛び出させリングギアにかませ、バッテリーからの電気をモーターに通電する役目を果たしている。モーターは通電しなければ動き始めないし、通電が続く限り回り続ける宿命なのだ。前夜ネットで調べた限りでは、キーを戻してもスターターが止まらない場合、ソレノイドが終わった可能性が高いと思って良さそうだった。

僕は今回のとは別に、6V用、12V用とスターターはあとふたつ持ってたりする。以前6V用にスターターを交換した時、ソレノイドは12V用のに付け替えようとしたけど、その時は互換性がなくてだめだった。今度は同じ12V用なので大丈夫なはず。ところが、なんということか、12V6Vギア用についていたソレノイドは6V用のものと酷似してて、またしても互換がなかった。形が同じなら6V用でもいけたかもしれないが、問題が出た可能性がある部分だし、気が進まない。こうなったら中古で何とかならないか。何度かお世話になっているジャッキアップに連絡を取ってみた。事情を話すと、中古のスターターが幾つかあるから見にいらっしゃいと言っていただいき、バックパックにスターターを詰め込んで、バイクで出撃したのでした。全部で10個ぐらいだったかな、中古を見せてもらい、怪しいのはソレノイドを外して見てみたものの、12V6Vギア用のソレノイドと同じタイプを使っているスターターはなかった。さぁていよいよ困ったぞ。他のショップに行けば、あるいはちょうど良いのがあるかも知れない。だけど、あの時のようにこ○き扱いされるのは嫌だ。しばらく考えて諦め、そのまま、携帯で12V6Vギアのスターターを注文したのでした。

three solenois ソレノイドの比較。左から6V用、12V用、12V6Vギア用。右のふたつは同じ12V仕様だけど、プレートの形状、シャフトの移動距離が異なる。6V用と12V6Vギア用はそっくり。

どこまで正確な数字かは分からないけど、体重計を使ってシャフトの押し戻す力を測ってみた。6V用が6kg、12V用が7kg、12V6Vギア用のは5kgしかなかった。電気が途絶えた時にドライブピニオンを引き戻す力が弱くなってスターターが回りっ放しになってしまうんだろうか。

6v starter mark 12v starter mark 12v6vg starter mark 各スターターとソレノイドの刻印。6V用、12V用、12V6Vギア用。


スターター交換 → オーバーホウル

二日後の午前中にスターターが届く。早速ソレノイドを外してどんなのが付いてるのか見てやろうと思ったけど、ショックドライバーを使っても固定ボルトが緩んでくれない。ここでぶっ壊しては意味がないので、ひとまず分解は諦めて、ビートルに組み込むことにした。バッテリーを繋ぎキーを回し、そして戻すをしてみると、スターターはちゃんと動いて、そして止まってくれる。やっぱりソレノイドが問題だったんだろうか。

これで一段落と思ったのもつかの間、2代目の12V6Vギア・スターターの具合がおかしいことに気がついた。確かに回せばスターターは回り、キーを戻すと止まるのだが、スイッチをONに戻した時、つまりスターターを止める時に、ぎゃぁ〜〜と鳴る。この音は以前6Vのスターターを使っていた時と似ていて、エンジンがかかったかどうか、ギリギリのところでキーを戻せば音は出ないけど、エンジンが確実に掛かった後でキーを戻すと不快な金属音が聞こえるのだ。そう言えば前回、12V6Vギアのスターターはアメリカでリビルトしたものなので、動作保証ができない、ようなことを言われたんだった。今回電話で注文した時には保証の件については言われなかったけど、たぶん状況は変わってないだろうし、今回はハズレだったのかも知れない。

ちょっとがっかりだったけど、回転が止らないスターターよりはましなので、そちらは置いといて、これまで使ってきた12V6Vギアのスターターをバラしてみることにした。

solenoid's cap off ソレノイドはハンダを溶かしてフタを外す以上の分解はできないので(実際は分解できないことはないらしい…)、接点を磨いてスレッドコンパウンドを軽く塗ってやった。隣の写真は以前12V用のをバラした時のもの。ハンダ吸取機を使わないと、溶けたハンダが配線を伝って奥に流れてっちゃいます。

rusted brush bracket 続いてモーター側を分解してみると…。なんじゃこりゃ、4年弱でこんなになってしまうのか?これでは不法投棄された車のパーツにしか見えないぞ。

motor cap off shaft end special grease on spline 恐らくモーターの中に水が入ったんだろう。普段下になってる部分のサビが酷い。

sealing location 組立時には防水処理をすることになっているのだが、このスターターには防水処理の形跡は見られなかった。というか、僕が持ってるスターターで防水処理がされてたのなんてあったかな?組んだ後全体的に黒く塗装して、大丈夫ってことにしてるのではあるまいか。本来ならイラストのように、合わせ面はもちろん、ネジのひとつひとつまで、すべてシールせよ、なのだ。

after clean up 一通り分解してサビを落としてみた。スターターにはビルトインでグリースが入っているので溶液で洗ってはいけない、らしいが、固着しているカバーを外す時に少々ぶっ叩いたので、サビを内部に振り蒔いてしまった。グリースは僕が持っているのとは違い高級そうだったけど、しかたなく全部拭き取った。

問題のグリースは、見た目と触った感じからして、電気製品のモーターとかに使われているのと似てる気がした。ググったところ、日本グリースのニグエースNSLがちょうどいいような気がしないでもない。ただ、素人がお店に行って買えるような代物ではないような気もするし、最低5リッターから、とか言われちゃいそうだしな…。グリースが塗られてるスプラインの部分は常に擦れ合うところでもないし、ヘビーデューティーなグリースでなくても良いのかも知れない。逆に硬度が高いと低温時に抵抗になってしまいそうだ。ドライブピニオンが行ったり来たりするシャフトなので、ここがしぶいと、スターターが動かなくなったり、止らなくなったりするのかも知れない。結局、触った感じが一番近くて低温にも対応している白色ウレアグリースを使いました。

stop ring ドライブピニオンが飛び出ないようにしているストップリング。ディープ・ソケットを差し込んで叩けば簡単に外せたけど、はめるのは楽ではなかった。こいつを取らないとシャフトのスプラインを掃除できない。通常の作業では外す必要はなしとのこと。

stop ring back in place 多少苦労はしたものの、安物のプーラーを使ったらスコン!と入ってくれた。引っ張り方を間違うとスナップリングが隙間に噛み込んで広がってしまう。スナップリングを縮めながらストップリングを引っ張るといいようだ。

一通り組んだところで、動作チェックをしてみた。あくまでソレノイドがちゃんと機能してモーターに導通があるかを調べるためのみ。モーターがちゃんと回るかを調べるには、アーマチャーがちゃんと中心になるようなブラケットを用意しなくちゃいけなくて面倒くさい。モーター側にテスターを当てて導通モードにしておき、ソレノイドの入力に12Vを流したところ、ドライブピニオンが勢い良く飛び出てテスターのブザーが鳴ってくれた。

車に積むとまた別の症状が出るかも知れないので、新しく手に入れたけど難ありのスターターを外し、本来壊れたはずだけどオーバーホウルを済ませた方を取り付け、キーを回してみた。すると、モーターはいかにも調子が良さそうな音で勢い良く回り、何度やってもキーを戻せばきちんと止まる。エンジンが掛かった後の金属音は当然しない…。あれ、君は壊れてたんじゃなかったのかい?

2代目スターターの金属音は、実はソレノイドの戻りが悪いせいじゃないかと思い、OH済みのとソレノイドを交換し、再び積み直しテストしてみた。が、少しマシになった気もするけど、やっぱり金属音が残る。その後、OH済みに2代目のソレノイドを付けてみたりと何通りか試したが、結局、OHしたモーターとOHしたソレノイドのセットが一番調子が良かった。一体何回スターターを付け替えただろう。面倒なのでジャッキアップはしなかったので、狭いわ体勢はきついわで、最後は腕がプルプルしちゃった。後から考えれば、ジャッキアップした方が遥かに面倒が少なかったようです。

sealed with white gasket 最高のコンビが見つかったところで、もう一度スターターをバラして、マニュアルにあるように、防水処理をすることにした。スターターの内部を見た時のショックを考えれば、これは絶対にやっておかなくちゃいけない。スターターは黒いので、ちゃんとシーリングできてるか見えやすいように、アクスルブーツを交換した時に買った白い液体ガスケットを使ってみた(写真は金属音が出る、ダメな12V6Vギア君)。

というわけで、素人オーバーホウルでスターターは直ってしまい、しかも新しいものよりも状態が良くなってしまいました。OHした結果としては、回りっ放しの症状が解消しただけではなく、これまでよりも遥かに回転がスムーズで力強くなりました。まぁ、内部があそこまで錆びてりゃ動きが渋いのも無理はないな。

実はこのページを書いててひらめいてしまったんだけど、スターターをバラバラにする気があるのなら、ソレノイドとエンゲージ・レバー(ソレノイドの動きをドライブピニオンに伝える二股のレバー)をセットで交換すれば、12V用のソレノイドを12V6Vギア用に移植することもできたのではないか。何とも言えないけれど、なんか、いけるような気がしないでもない。ともあれ、ひとつだけ確かなのは、2代目12V6Vギア用スターターは全く買う必要はなかったということでした。

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