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スプリングプレート・ブッシュの交換

- 交換した理由 -

症状その1 - 以前、砂浜でスタックした時、脱出を試みて前進しようとすると、リアホイールが激しくホッピングしたことがあった。バックではホッピングは起きず、タイヤが普通にスリップするという状態だった。

症状その2 - 特に寒い時期になるとギャップを越えた時にリアから「ギュシュギュシュ」音や「コトコト」音が出るようになってきた。

working site ホッピングはミッションマウントの寿命が来たり、スプリングプレートのブッシュがへたったりすると起こるらしい。ミッションマウントを調べたところ、特に問題があるようには見えなかった。とは言え、本格的に調べたり交換することになると、エンジンを降ろし、ミッションも後ろにずらす必要があるので大掛かりになる。リアの異音は明らかにブッシュがへたっていることを示していたので、まずはブッシュを交換して様子をみようと思った。


- 用意したパーツや道具 -

new bush ブッシュ:僕のビートルはスイングアクスルだけど、トーションバーから延びたチューブがカバープレート突き抜けているという、ダブルジョイントと同じ仕様になっている。このためブッシュもダブルジョイント用と同じで、インナーはトゲ付き、アウターは丸いタイプを使うのが正しいらしい。VW純正のラバー(おそらくメキシコ製)を選んだ。

talcum powder タルカムパウダー:ベントリー、ヘインズ共に、ブッシュはタルカムパウダーをまぶして組み込むべしとしている。タルカムパウダーってのはどこに売っているのだ?ホームセンターで尋ねてみても「そのタルタルパウダーってなんですか?」と逆に聞かれる始末。調べてみたらベビーパウダーは成分の約98%がタルカムパウダーでできていることが分かった。ベビーパウダーによっては酸化亜鉛が入っているタイプもあったけど、ゴムにどういう影響が出るか予想がつかないので、タルクと香料のみが使われているジョンソン&ジョンソンのベビーパウダーにしておいた。

protractor プロトラクター:スプリングプレートの角度を測るために買った角度計。オイル注入式で動きがスムーズなので選んだものの、文字や目盛りが細か過ぎて、ルーペを使わないと何度だか見分けがつかないことが発覚…ちょいと失敗。ついでに言うと、スプリングプレートを外しても元の位置に戻すだけなら角度を測る必要はなかったみたい。

long bolts 長めのボルト4本:トーションバーカバーの締め込み用にボルトを4本(10mm×35mmを2本、10mm×30mmを2本)調達。「通常のボルトが届かなかった場合に長めのボルトを使いまず締め込む」とマニュアルに書いてあったので念のため揃えておいたわけだけど、今回の作業で一番の鍵になったのはこのボルトだったかもしれない。


- 分解 -

スイングアクスル仕様のスプリングプレートはU字にアクスルを囲むような形をしているので、アクスルを後ろにずらさないとスプリングプレートが外れない。そのため、めんどくさいことにブレーキドラムを開けて、パーキングブレーキのケーブルをバッキングプレートから外しておく必要がある。マニュアルを見る限りでは、ドライブアクスル仕様はスプリングプレートが途中から分離するような形になっているので、ブレーキは弄らずに作業ができそうだ。

working リアショックとパーキングブレーキ・ケーブルを外し、スプリングプレートとリアアクスルの切り離しにかかる。まず、組み直す時に元の位置に戻せるように接続面に沿ってけがきを入れる。この位置がずれるとリアのアライメントが狂う。走る分には気が付かない程度でも、きっと車検には落ちるんだろう。

ボルト3本を抜くとリアアクスルはフリーになる。そのままぶら下げておくとアクスルブーツが潰れてしまいそうなので、パンダジャッキで支えておいた。僕のアクスルブーツはまだ一体型のが付いているので、もう少し頑張ってもらいたいのだ。

cover taken off ボルト4本を抜き、トーションバーカバーを外したところ。スイングアクスルだと、通常はこの部分のチューブが短くてカバーにも穴が開いてないのだ。この状態だとスプリングプレートはストッパーに乗って止まっているので、トーションバーのテンションを溜め込んでいる。何かの拍子でドカンと落ちては事なので、アクスルを外すあたりからプレートの下にはジャッキを入れといた方が安全かもしれない。

この後、ストッパーから浮くまでジャッキでスプリングプレートを上げ、バール等を使ってストッパーの外側にずらし、ジャッキを下げてトーションバーのテンションを抜いていく。スプリングプレートは鉄の板なので、外側に引っ張ればたわんでくれる。正しい方法かどうかは分からないけど、バールでこじりながら、さらにプレートを外側に引っ張るようにしながら下げていった。

mark the angle ストッパーを越えてプレートが降り切ったところで、トーションバーのスプラインに入っている角度を記録する。写真は右側のスプリングプレート。マニュアルに書いてある通り、プレートを下から軽く上げて遊び分を取ってからけがいた。

set protractor ここでプロトラクターを使って角度を測ってみた。車が水平になっていることはほぼないので、車体の角度をドアを開けたところのフレームで測り、スプリングプレートの傾きから足し算引き算して角度を割り出す。スタビライザーが付いていないビートルの場合、正規の角度は17度30分…つまり17.5度か?だいたい合っていたと思う (笑) 但し、ノーマルの車高からノーマルの車高に戻す場合、角度をいちいち測る必要はなさそうだ。プレートがどの位置についていたか、けがいておけば元に戻すのは簡単なはずだからだ。

no room spring plate is out ぎりぎりで抜ける計算だったけど、チューブの長いスプリングプレートはフェンダーに当たって抜くスペースがなかった。このため、フェンダーを止めているボルトを3-4カ所、ランニングボードを止めているボルトを緩めて、フェンダーをずらしながらスプリングプレートを抜き取った。

old and new rubber tale old and new rubber face 上のふたつがそれぞれこれまで付いてたラバー(左サイドの作業時に写真を撮り忘れたので、写真は右サイドのラバーです) 。丸いアウターは裏も表も元の形とは全然違った物体になっていた。一方トゲのあるインナーは表から見る分にはあまり変化は見られないが、裏側にあるはずのリップ?が完全に潰れている。

Arriba and Oben 新旧ラバーの比較。取り出したインナーラバーには微かに「OBEN」の文字が残っていた。一方、左側の新しいラバーは「ARRIBA」に変わっている。「OBEN」はドイツ語、「ARRIBA」はスペイン語でそれぞれ「上」を意味する単語だ。ということは、これまで付いてたのはドイツ純正か?


- 組む -

分解した後は特にやることは思いつかなかったので、スプリングプレートのラバーが入る部分を軽く磨いたり、トーションバーのスプラインにグリスを塗っただけで、そのまま組付けに入った。

coat talc coated rubbers とりあえずラバーにベビーパウダーをまぶす。Ziplockにパウダーとラバーを入れて唐揚げ粉をまぶすようにシェイクした。で、ラバーを袋から取り出すと右の写真のようになっていた。なんだかおいしそうだぞ。

new rubber in アウターは良いとして、インナーはトゲが出ているため、スプリングプレートに対して付くべき角度が決まっている。車体側のくぼみにラバーをはめてからスプリングプレートを差し込めれば簡単なんだけど、これがどうして…後からではチューブにうまく差し込むことができない。なので、トーションバーのスプラインにハマった時、プレートがどのくらいの角度になるのかを計算しながら、インナーラバーの角度を合わせてプレートにはめておく必要があった。作業をしてると手で触れたりしてせっかくまぶしたパウダーが落ちてきてしまったので、最後にもう一度パウダーを少し手に取ってラバーを撫でてから組み付けを続けた。

can't align トーションバー・カバーのボルトは、ばらす時とは逆で、スプリングプレートにテンションがかかっていない状態である程度締め込んでおき、プレートをストップに上げた後に最後の締め込むのが正解らしい。 実は最初、スプリングプレートをストップに乗せてからボルトを締めようとしたのだが、ゴムの厚みのせいかテンションのせいか、ボルトの穴はまったく合わなかった。

仕方がないので、もう一度スプリングプレートをストップから落とし、カバーのボルトを締め込もうとしたところ、20mmのオリジナル・ボルトでは長さが足りず、ねじ穴にまったく届かなかった。ここで、念のため買っておいた長いボルトが大いに活躍してくれた。

fitting bolts 長めのボルトである程度までカバーを締め込んでから、1本ずつオリジナルのボルトに差し替えていく。マニュアルでは対角の2本を長めのボルトで締めるように書かれているけど、結局4本とも長いボルトを使って仮締めを行った。

最後の締め込みの段になってボルトが届かないことが分かったらえらいところだった。アウターラバーはなかなかカバーに入ってくれないし、オリジナルのボルトで届くことなんて果たしてあるんだろうか。

plate with torsion bar ところで、左側のスプリングプレートは素直にトーションバーから抜けたものの、右側は少し錆びていたため、トーションバーが一緒に抜けてしまった。滅多に見られるものではないので、ちょいと記念撮影。トーションバーには外側(スプリングプレート側)に白いマーキングがしてあった。


- で、どうなったか -

ギャップを越える時に出ていた「ギュシュギュシュ」音は、ラバーを交換した後は完全に出なくなった。ただ「コトコト」音に関しては、あんまり変わっていないような気がしないでもない。あとはホッピングが起こるかどうかだけど、こちらの方の検証はしばらくはできそうにない。解決していることを願うばかりだ。

今回の作業にあたって心配だったのが、スプリングプレートをストップからこじり出した時に、跳ねたり飛び出してきたりしないかということだった。作業をした結果、予期しない動きは見せないことが分かった。ただ、スプリングプレートにはそれなりのテンションが掛かっているので、ジャッキを当てて用心しておいた方が良い。

open space パーキングブレーキのケーブルをバッキングプレートから外す際、シャシーブラックなのか、粘度の高い物体がボルトやケーブルの周りにこびりついていた。全体的に剥がして作業したのだが、最後に組んでみると、ケーブルを止めているブラケットとバッキングプレートとの間に少し隙間ができてしまった。

taped with butyl ここに隙間があると水がドラム内に入り込むので宜しくない。そこで片面ブチルテープを使って隙間を埋めてみた。

ところでこの片面ブチルテープ、僕は片面だけ粘着力があって、表はただのゴム状になっているのかと思ったら、通常のブチルテープの片面に薄い紙状の物が貼ってあって粘着力を殺しているだけの代物だった。同じ金を出して、粘着力が半分の物を手に入れたようなもので、損しちゃった。通常のブチルを貼って、ティッシュペーパーでも貼付ければ同じことだった。貼った直後では紙の部分が白くて絆創膏のように目立っているが、そのうち汚れてくれば、周りと馴染んでくれるんじゃないかと思っている。

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