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クラッチ交換

週末の夜、ドンキホーテ川崎店は混んでいた。駐車場へと続く長い上り坂は、車が数珠つなぎになっていて、オートマ車特有のダラダラ走行が続いていた。トルクがあるVWエンジンとはいえ、きつい上り坂でその真似はできない。1メーター走り、そして止まるを繰り返していた。こういうのってクラッチを痛めそうだなぁ。なんとなくそう思っていた。駐車券の機械まであとコーナーふたつというところまで来た時、突然、強烈な音が車の下から聞こえてきた。ガァーーーーー、、ギギギギギギィ〜〜。なんですかぁー!音的にはワイヤーとかパーツで路面を摺ってるような感じ。クラッチを踏み込むとガラガラと大きな音をたてる。大混雑の駐車場の登りスロープで止まってしまっては大ひんしゅくだ。すぐにでも車の下を確認したかったけど、もう少しで駐車スペースに届くので、ここは無理してでも走りきってもらうことにした。

駐車スペースに車を止めてエンジンを切る。車の下を調べてみると、特にパーツが垂れ下がっているということはないし、つい最近交換したクラッチワイヤーもしっかり付いているようだった。さぁて、困った。ま、せっかく来たのだし、とりあえず当初予定していた用事をすませるため店内に。このまま帰ったのでは、車を壊してまで来た意味がなくなってしまう。家まで自走はできんかもしれないと思い、カー用品のところで、牽引用ロープも仕入れておいた。

何となくスラストベアリングな気もするけど、いきなりこんな音が出たりするんだろうか?近所に住む知り合いに、もしもの時は牽引を頼めるかSOSの電話をしてみる。「とにかくすごい音でさ」状況を説明するために再びエンジンをかけると、音がでない…。あれを聞けば知り合いも臨戦態勢に入ってくれると思っていたが、聞こえてくるのは普段のVWサウンド。これじゃ、何の説得力もない。「平気そうじゃん?」「そうですね。お騒がせしました…」

問題はクラッチ関係のようなので、帰りはなるべくギアチェンジをしなくてすむ高速を使うことにした。でも、走り出してみても、さっきの騒ぎが嘘のように音は全然しないし、クラッチに違和感もない。いろいろな思いが頭をよぎるドライブだったが、結局無事自宅駐車場へ到着。知り合いには到着した旨メールを送り、その日は終わったのだった。


週明けの月曜日、大田区にあるショップ、安藤運輸に連絡を取った。以前遊びに行った時、OH済みの1200用ミッションがあったので、今回どうせエンジンを下ろすならついでにミッションも交換してやろうという、半ばやけっぱち作戦だ。1200用のミッションなんて需要はないだろうから、まだ売れ残っているに違いないと思っていた。レース(ドラグレース?)用として人気があるなんてことはその時は知らなかったよ。ミッションの件は電話ではうまく伝えられず、とにかく行くことに。僕のうちから昼間だと2時間は優にかかる。壊れたから修理するのに、そんなドライブをしても良いんだろうか?悩みながらドライブするも何不便なく着いてしまい、そもそも修理が必要なんだかよく分からなくなってきた。相当の覚悟で決意したミッション交換も、肝心のOH済みミッションはすでに売れてなくなっていたので空振りに。そうなると、安藤さんのところで修理してもらう必要はあるんだろうか…。しばらく悩んだけど、どこに問題があったのかの特定とその対策をしてもらうことにし、エンジンを降ろす時に連絡をもらうことにして、その日は電車で帰宅となりました。

main shaft coming out 予定日の朝10時頃、これから降ろすよ〜、と連絡をもらう。すぐさまバイクで向かい、1時間ちょっと掛かったか、着いたらすでにエンジンは降りていた。はえぇ。。僕のエンジンはメインシャフトをつないでいるスタッドが折れていて(外からは確認できないので、状況からしてそうであろうということだが)、エンジンを後ろに引っ張るとシャフトも一緒に抜けて来てしまう。以前エンジンを降ろした時には、キャブやらオルタやらタイミングプーリーまで外して工具を差し込むスペースを稼ぎ、やっとのことでエンジンが降りた。だけど工場に置いてあるエンジンはそのままの形で、すべての装置がついたままだ。長い工具でピッピってやった、とのこと。恐れ入りました。

broken ring ドンキで異音を発したと思われる部分。スラストベアリングに貼ってあったベークライト(?)のリングが割れて飛び散っていた。一つはスターターのギアあたりに引っかかっていた。そう言えば、このところ、セルをまわした時に変な音がしていたような気もするけど、このせいだったのかな。

thrust bearing knob wear スラストベアリングとクロスシャフトの爪の当たり面はかなり摩耗している。

clutch wear made in brazil クラッチ板は一番浅いところでは1ミリあるかどうかくらいと、そろそろ交換時期に来ていた。どうやらこれまでついていたのはブラジル製のようだ。

あの日起こったことはこんな感じだったんだろう。すでにヒビだか部分的に割れていたスラストベアリングのリングが剥がれて、飛び散り、どこかに挟まってギィギィ引っ掻く音を発生させた。駐車スペースに入りエンジンを切った時、かけらが下に落ちる。次にエンジンをかけた時は異音はしなくなっていた、と。

クラッチ板も減っているし、せっかくエンジンを降ろしたのでクラッチ丸ごと交換をお願いすることにした。本来ならそこで僕の役目は終わったのだが、暇だったので、降りてたエンジンの写真を撮らせてもらったり、普段は手が届かないところの汚れを落としたりしていた。そうこうしているうちに「暇なんだったらクラッチ買いに行ってくる?」ということに。おお、行きますとも。

LUK Rep Set 今回は大手パーツショップを利用。特に何も考えずSACKSの3点セットを出してもらった。精算も済ませようかという時になって、こいつがコイルスプリングの3本爪タイプなことに気がついた。クラッチを交換する時にはよりペダルが軽くなる(はずの)ダイアフラム式にしようと決めていたので、これではダメだ。ところがSACKSには180mm用のダイアフラム式はないんだという。調べてもらうとSACKSよりも若干値段が高いLUKに180mmがあった。LUKのクラッチはダメだ、とどこかで読んだ気もしたのだが、目の前にあるクラッチは信用できそうだし、スラストベアリングはSACKSのよりもずっと丈夫そうだ。何よりもダイアフラム方式は諦められなかったのでLUKでいくことにした。

安藤さんにクラッチを届けてその日は帰宅。家に帰ってからウェブを眺めていたら、3点セットよりも、パーツをひとつずつ買った方が値段が安いことに気がついた。お得なセットが割高とはこれいかに?翌日連絡を取ってみると、しばしの保留後、3点セットはドイツ製で値段が高いとのこと。そういうことか。ドイツ製のLUKもダメなクラッチなんだろうか。まぁ、そのうち答えはでることでしょう。

2日後、作業完了の連絡をもらい引き取りに行く。て、おいらも暇だねぇ。何はともあれ、まずはクラッチペダルを踏んでみる。これが、なんと軽いことか。クラッチは消耗してくるとより軽くなってくるらしいので、これまでのクラッチが古くなって重かったのではないはずだ。新品でこれだけ軽いということは、やはりダイアフラム式の方がクラッチは軽いんだな。足にも優しいしクラッチワイヤーの寿命にも影響するはずだ。何よりも気持ちが良い。しばらくはクラッチを踏みながらケタケタ喜んでいた。

交換後はクラッチミートの具合が変わったのでしばらくコツを掴みづらくなったが、これまでのような微妙なジャダーは一切なくなった。以前のクラッチは少し滑っていたらしいので、加速が良くなった気がするのもそのせいか?パワーが逃げなくなった分、燃費も上がっちゃったりしたら最高だな。(←後日談:燃費は特に向上しませんでした…)

というわけで、久しぶりにショップで作業をお願いした。数日経つと車が勝手に直ってくるという、素晴らしいシステムだ。料金もあそこのショップのエンジン脱着料金とほぼ変わらないほどで助かりました。

時は2006年12月も末。その後、年末年始と作業に明け暮れることになる、序章とも言うべき出来事でございました。

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