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キャブレターのオーバーホール

キャブレターからガソリンがにじみ出てくるようになったので、オーバーホール(OH)をすることにしました。実は前々からやってみたかったことでしたが、かえって調子が悪くなったら嫌なので、これまでは触らずにきていました。しかしガソリンが漏れているとなると、もはや放っておくわけにもいきません。もっとも汚れを落としてガスケットを交換する程度の作業なので、OHというのはちょっとおこがましい。本当のキャブのOHは素人には出来るようなものではないらしいので、僕がやろうとしているのはキャブ・クリーニングということになるのでしょう。

Solex30-pict3_late僕のビートルに付いているのはSolexの30Pict-3ですが、バイパス・エア・スクリューがボリューム・コントロール・スクリューの上についていて、カットオフ・スイッチも本体の左側についているという、34PICTと同じ仕様で、通常の30PICT-3とは違うタイプです。これが謎でしばらく悩んでいたのですが、30PICT-3には前期型と後期型の2種類があって、僕のは後期型だったようです。ちなみに前期型はスクリューの位置関係が上下逆で、カットオフ・スイッチも本体の右側についているのです。


汚れる手 ガソリンが漏れた跡 キャブの周りを触るとガソリンが気化した後のドロドロの赤い液体が手につきます。 全体的に汚れているものの、加速ポンプ付近の汚れが特にひどいので、少なくともここからガスは漏れていたわけです。

パイプが抜けたキャブを外す際、フューエルホースをキャブから抜こうとしたら、真鍮のパイプが根元から抜けてしまいました。無理やりこじったわけでもないので、ここも緩んでいてガソリンが若干漏れていた可能性があります。聞いたところでは、このパイプが抜けることはそれほど珍しくもないらしく「プラハンで叩き込んでおけば良い」らしいです。しかし走行中に一気に抜けていたら厄介なことになるところでした。要チェックポイントですね。

キャブ左側 キャブ分割作業に入る前には、まずフロート室下にあるボルトを緩めてガソリンを抜くのだそうだ。僕はキャブを外してからガソリンを捨てようとしたので、少々ガソリンを振り撒いてしまいました。キャブを外した後、スロットルレバーのスプリングを外して、上部のボルト5本を抜くとキャブは真っ二つになりました。正確に言うと、ガスケットで密着していたので、軽く叩きましたが…

灯油のお風呂 こびり付いている汚れをふやかすため、残りのパーツやジェット類をバラして一晩灯油の中に浸けておきます。この際、フューエル・カット・オフ・スイッチ、オートチョークのコイルは分けておきます。僕が買ったOHキットにはバイパス・エア・スクリューとボリューム・コントロール・スクリューは付いてなくて、ゴム製のOリング共々再利用になるので、こちらも灯油には浸けずに分けておきました。いつも使う手ですが、細かいパーツは紙コップに入れて分類しておきます。どの部分から外したものなのかマジックで書いておけば間違う心配もないし、使い終わったら紙コップは捨てるもよしとけっこう便利です。と、ここまできたところで1日目の作業はおしまいです。 おやすみなさい


汚れた灯油で、 翌日、歯ブラシやらを使って汚れを落としたら、灯油はこんな感じで真っ黒になってしまいました。ほとんどがボディ外側の汚れだけど、これだけ汚れが落ちてくれるとやりがいがあります。細い管の汚れはワイヤーとかを使ってこじると口径が狂う危険性があるので、コンプレッサーなどの圧縮空気で吹き飛ばします。僕はコンプレッサーは持ってないので、エアースプレーを調達しておきました。ただ管がどこに繋がっているのか分かっていないので、エアーを吹き込むと、思いもよらなかったところから空気が噴き出て来て、灯油混じりの空気を顔に浴びることになってしまいました。

float needle valve float needle valveフロートニードル・バルブは、フロートの浮き沈みに連動して常にぴょこぴょこ動いているパーツなので長年酷使されている部分です。必ず交換すべしという意見と、アフターマーケットのものは質が悪いので、古くてもオリジナルをキープした方が良い、という意見のふた通りあるんですが、僕も当初はどうしようか迷ってました。ところが良く見てみたら僕が買ったOHキットに付いてきたバルブは形が全く違っていたので、はなから交換するのは無理でした。写真の左側が元々付いていたもの(たぶんオリジナル)で、右側がキットについてきたものです。キットのはフロートに当たるところにスプリング付きのボールがあって良い感じだけど、動きが渋いと言えば渋い感じもしますね。ここの動きが渋いと、フロートの動きがうまく伝わらないので、オーバーフローしたり、ガス欠状態になったりと困ったことになるはずです。

交換したパーツ今回の作業で交換したパーツ達。キットのベースガスケットは微妙に形が合わなかったので、穴を大きくしたり修正が必要でした。インテークマニホールド用のガスケットは、キャブの下にオルタネーターを避けるためのスペーサーをかましているので2枚使います。前回交換した頃は、このガスケットは1枚600円とかアゴが外れるような値段だったので、ガスケットシートを切って自作してしまいました。今なら単体で100円とかで買えるみたい。

きれいなキャブほぼ組みたてが終わった状態。すっかり綺麗になってくれたので、膝の間に挟んでも大丈夫。エンジンから外した直後のキャブはとてもじゃないけど、服につけられたもんじゃありませんでした。

インジェクター間違い stuck batterfly 取り付けが終わりエンジンを掛けてみたら、暖気後もチョークが最後まで戻らず回転が落ちませんでした。エアクリーナーを外し、上から覗いてみると、加速ポンプのインジェクターの角度を間違っていて、チョークのバタフライに干渉していました。エンジンに組み込む前に撮っておいた写真には、チョークが開き切らない状態がしっかり写っていました。組み立てる時に注意してれば気がついたはずです。

インジェクター修正正規の位置はだいたいこんな感じ。ただ、インジェクターから噴き出たガソリンがどこにも当たらずに下まで通る位置が正しいとのことなので、実はこれだと少し角度がつき過ぎてます。僕はこの状態で組んで、後からさらに間違っていることに気がついたんですが、もう一度バラすのがめんどくさいので放ってあります。インジェクターの固定は圧入するだけなので、そのうち抜けちゃわないのかちょっと不安。これ吸い込んだらやっぱりエンジンは壊れるよなぁ…

チョークがちゃんと戻るようになったので、やっとキャブ調整ができるようになりました。バイパススクリューとボリュームスクリューの開度は、バラす時にどのくらいだったかをメモしておくと復帰が楽です。全くデータがない場合は、2〜3回転開けたところからスタートすればいいようです。

洗浄後テスト走行をした感想としては、何と言うのか、回転がスムーズになった気がします。それと若干トルクが出たような… まぁ、どこまで良くなったのかは、謎です。ワックスをかけただけでも車の調子は良くなったような気がするもんですからね。

というわけで、多少の難はあったものの、思ったよりも簡単に作業は終わってしまいました。こんなことならもっと早くやっておけばよかったな…


●キャブOHをするにあたって不安だったこととか

フロートレベルが狂うのではないか → フロートレベルはフロートニードル・バルブのワッシャーの厚さで調節するので、洗浄作業をするだけな分には基本的に狂わない。

加速ポンプの調整が狂わないか → 調整ネジは緩めなくても加速ポンプ本体は外せるので、触らなければ狂う心配もない。仮に調整ネジを緩めたとしても、元の位置に戻せば変化はないはず。

へたにOHとかして、かえって調子が悪くならないか… → よっぽどヘクらなければ調子を悪くしようがないほど、キャブはシンプルな作りであった。

●反省点

加速ポンプのインジェクターの角度を適当につけてしまったので、チョークが効きっぱなしになってしまった。さらに良く調べてから処理しなかったので、今以って正規の位置になっていない。要するに元々どうなっていたかの確認不足。

キャブを股に挟んだ状態で組んだので、全体的にボルトやらの締め付けが甘かった。ネジやボルトは、本体を固定した状態でないとうまく締められない可能性があったようだ。

●気をつけたいこと

バラす時はデジカメで写真を撮ったりメモを取りながら行った方が良い。インジェクターの件もそうだけど、バラした時の写真を見ておけば間違うことはなかった。ジェット類は付いている場所と刻印をメモしておくこと。

フロートニードルバルブは交換する前にクオリティをチェックすべし。

OHキットによっては、微妙なパーツの違いがあるので、多少の調整が必要。ベースガスケットの形が合わなかったり、加速ポンプ・ダイアフラムの面取りが省略されていた。


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