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リアアクスル・ブーツの交換

leaky axle boot

ある日車の下に潜ってみたら、ミッションの下を通っているフレームフォークがオイルまみれになっていた。アクスルブーツからのオイル漏れ…ついにこの日が来てしまったか。ビートルを買った時に付いてきた整備記録を見ると過去に交換した記載はないし、ノンスプリット・タイプがついてることも考えると、このブーツは71年当時から付いていたオリジナルのブーツだったのかも知れない。となればすでに30年以上使ってきたことになるわけで、耐久年数たるやすごいものがある。


実はこれに気が付いたのは、クラッチワイヤーが切れて車の下に潜った時だった。アクスルブーツからオイルが漏れているのにモチヌシは一向に気が付いてくれないので、ビートルが注意信号を出したかのようだ。クラッチワイヤーを切ってしまえば、さすがのアホでも車の下に潜るだろうと。

アクスルブーツの交換部品として一般的なスプリット・タイプは、すぐにオイルが漏れた、とかいう話をよく見かけるので気になるところではある。アクスルブーツは品質が良いもの悪いものがいろいろと出回っていて、しかも見分けがほとんど付かないときている。きょうび、Made in Germanyと堂々と書いてある中国製パーツまで出ているくらいだから、油断も隙もあったもんじゃない。とは言え、ノンスプリット・タイプを付けるにはアクスルを一度外すしかなくて作業がおおごとになってしまうので、やっぱりスプリット・タイプに交換するしかない。


new boots ブーツは例によってレディバグで購入。水冷の世界では知られたメーカー?とか。何種類かブーツを並べて話を聞かせてもらったけど、直接見比べないと違いには気が付かないだろうなぁ。というか、見ただけではどれが良いのかは判断付かないや。

アクスルブーツは結構奥まったところについているものの、後輪を外してヒートエクスチェンジャーに繋がるパイプを外せば、アクセスは悪くはなかった。作業をする前にアクスルをミッションから水平に出るまで上げないと、ブーツを捻った状態で取り付けてしまうらしいのだが、そもそもアクスルを持ち上げておかないと、フレームフォークとの隙間が狭すぎて作業ができそうにない。

純正のカシメをワイヤーカッターでぐりぐりはぎ取った後、カッターでブーツを切る。漏れていた右側はともかく、まだ漏れていなかった左側を切る時は、ちょっと複雑な気分だった。でも片方がダメになったということは、もう片方も時間の問題だったろうし、しょうがないか。オイルをこぼすのが嫌だったので、最初はブーツがアクスルに付いた位置で切ろうとしたけど、なかなか切りにくいのとアクスルに傷をつけそうだったので、ブーツをタイヤ側にずらしてからカットすることにした。オイル受けのバケットを用意してブーツを一気に開くと、『ヌプワッ』という不気味な音とともにミッションオイルが溢れてきた。これが臭いのなんの。僕はミッションオイルの匂い自体はそれほど嫌いじゃないんだけど、出てきたオイルは生ゴミというか肥料の匂いと言うか、とにかく強烈な匂いを発していた。ブーツの中はオイルが常時循環してなさそうなので、結構古いオイルが溜まっていたんだろう。

silicone gasket ちょっと悩んだのは、ブーツの合わせ目に液体ガスケットのようなものを塗布する必要があるかどうかだった。ゴムとゴムの合わせ面に使う液体ガスケットはどんなものがあるのか。探してみたけど「そう言う時には接着剤を使うのではないですか」とか店員には言われるし、どうも思ったようなものが見つけられない。とは言え、作業を始めてからやっぱり必要だと思っても手遅れなので、一番良さげだと思えたスリーボンドの#1212を買ってみた。2000円くらいしやがった。例によって他には使うあてはないので、高い買い物になってしまった。

new boot installed せっかく買った液体ガスケットだったけど、本来は付けなくても良いんだそうだ。付けても問題はないだろうと思い、最初に交換した右側には塗ってみることにした。これが結構狭いもんだから、ブーツを填めようとしているといろんなところに付けてしまい、煩わしい。というわけで、比較の意味もあり(本当はめんどくさくなった)左側は何も付けずに組んでしまった。しばらくしたらどちらが正解だったのか答えが出ることでしょう。

hole on boot 外したオリジナルとおぼしきブーツ。どこから漏れてるのか探すのに苦労したけど、一カ所だけ深いひび割れが見つかった。かなり引っ張らないと穴が空いてるかどうか分からないくらいだった。

実は今回ブーツがだめになったことには心当たりがあった。このことが起こる少し前、1週間以上板金塗装屋にビートルを預けていたのだ。一度様子を見に行ったところ、我がビートルはジャッキアップされていて、リアアクスルがでろ〜んと下がった状態になっていた。作業の途中だったせいもあるけど、どうやらそのままの状態で保管もされているような雰囲気だった。となるとブーツはフレームフォークに押し付けられたままになっていたということになる。それでギリギリ何とか耐えていたゴムが裂けてしまったんだと思う。ビートル専門店じゃないし、ジャッキアップしたら壊れるとは思ってないからなぁ。空冷ワーゲン専門店でも、ブーツが潰れるのを気にしながらジャッキアップはしてないか。そのくらいで破れるのはすでに寿命が来てるということなんだろう。


ブーツの合わせ位置はなぜ水平なのか、考えてみた

水が入ったコップは、斜めや横にするよりもまっすぐ上にしておいた方が水が溢れにくい。ブーツの合わせ面を上にするのは、それと同じことだと思う。ところがこいつはスイングアクスルというだけあって、走っているとぴょこぴょこ上下に動く。そのため、合わせ面の位置によっては都合の悪いことが起きてしまう。

boot with no tension アクスルが真っ直ぐな状態。ブーツにテンションが掛かっていないので合わせ面はきちんと閉じている。この状態で動かないのなら、ブーツの合わせ面は上にしておくのが正解なんだろう。

boot open top アクスルが上がった場合。実際はここまで上がらないはずだけど、要はこういう力が掛かっているわけだ。ブーツの下側は伸び上側は縮もうとして、合わせ面に開こうとする力が働いている。

boot open side 同じくアクスルが上がった状態で合わせ面が水平にある場合。合わせ面にねじりの力は掛かるものの、ここまでアクスルを上げてもぱっくり開こうとする力がほとんど掛かっていない。

僕は当初、横と上の間を取った45度が一番良いかと思っていた。ところが、角度が水平から上がるにつれ、合わせ面にかかるテンションは強くなってしまう。オイルが漏れるのを嫌って合わせ面をなるべく上にしても、ブーツの密閉度が悪くなれば結局オイルは漏れてくる。というわけで、合わせ面は、アクスルが上下した時に一番ストレスが少ない水平が良い、ということになるんだと思う。

今回の作業では、ブーツを外した時にどれくらいのミッション・オイルが漏れてくるのか分からなかったので、念のため1リッター、相当ヘクった時のためさらに1リッターで合計2リッター(ここまで抜けたら空っぽだ…)を用意して事に臨んだ。ところが、最初に溢れた以上オイルは出てこなかったので、左右両側を合わせても300ccあれば十分だったようでした。

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